大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)255号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決を取り消すべき事由の存否について検討する。

成立に争いのない甲第四、第五号証によれば、昭和一六年実用新案出願公告第一三八七二号公報及び昭和一七年実用新案出願公告第四一二五号公報には、炭坑等において石炭を採掘した後の空虚部に砂を充填するため砂を水とともに注入する管、即ち注砂管の改良に関するものであつて、注砂管の管と鍔金とを別体として作り、これらを所定の形状に加工して管の接合をはかる技術が開示されていることが認められるところ、右各公報の「実用新案ノ性質、作用及効果ノ要領」の項に、引用例である「従来此ノ種管ニアリテハ所要ノ仕上ヲ施シタル接手用軟鋼製鍔金ヲ鋳造スベキ管ニ嵌装スル位置ニ於テ其ノ管ヲ鋳造スル鋳型中ニ埋設シタル後所要ノ管ヲ鋳造スルモノニシテ其ノ管ノ両端ニハ前記鍔金ヲ係止スベキ鍔ヲ設ケ鋳造後ハ管ニ何等ノ仕上ヲ施サズシテ接合スベキ管上ノ鍔金ヲ螺釘ヲ以テ互ニ締結シテ管ヲ順次接合スルヲ普通トス」との記載があることは、当事者間に争いがない。

右引用例は、その記載の趣旨からして、前記各実用新案登録出願当時における注砂管の従来技術に関する説明として記載された部分であると認められるけれども、その具体的構成や作用効果が記載されているとはいえず、またその態様を示す図面も示されていない。

原告は、引用例は、既製の鍔金の内周面に鋳物砂製の内殻鋳型を一体構造に形成焼成して、これを両端に右鍔金の内周面よりも大径であるところの、即ち鍔金を係止できる鍔を設けて注砂管を鋳造する鋳物砂の中に埋設(定置)して注砂管を鋳造し、管が鋳造された時に鍔金が同管製品に緩嵌装着された状態にする、いわゆる鋳ぐるみ鋳造法を示唆している旨主張し、その理由として、(イ)引用例の「所要ノ仕上ヲ施シタル接手用軟鋼製鍔金ヲ鋳造スベキ管ニ嵌装スル位置ニ於テ其ノ管ヲ鋳造スル鋳型中ニ埋設シ」とある部分は、要するに、完成品としての接手用鍔金の内周面に鋳物砂製の内殻鋳型を一体構造に形成焼成して、これを注砂管を鋳造する鋳型中に埋設することにほかならず、また、(ロ)引用例に「管ノ両端ニハ前記鍔金ヲ係止スベキ鍔ヲ設ケ鋳造後ハ管ニ何等ノ仕上ヲ施サズシテ」とあるのは、鋳型(本件発明の鋳物砂に相当する。)によつて鋳造されるべき注砂管は、その両端が右鍔金の内周面よりも大径であるところの、即ち鍔金を係止できる鍔を有するような注砂管であることを意味する旨主張する。

ところで、前記(イ)で原告が指摘する箇所を含む、引用例の「此ノ種管ニアリテハ所要ノ仕上ヲ施シタル接手用軟鋼製鍔金ヲ鋳造スベキ管ニ嵌装スル位置ニ於テ其ノ管ヲ鋳造スル鋳型中ニ埋設シタル後所要ノ管ヲ鋳造スルモノニシテ」との記載部分は、要するに、鋳造すべき管と管相互を順次結合するのに必要な接手用軟鋼製鍔金とからなる注砂管を製造するには、加工面を仕上げ状態とした(「所要ノ仕上」とは、鍔金そのものの加工の程度を抽象的に表現したものと認められる。)接手用軟鋼製鍔金を、鋳型の中において、鋳造すべき管に対して嵌装する位置に埋設した後、管を鋳造するものであることが示されているにすぎず、加工面を仕上げた状態の接手用軟鋼製鍔金を、管を鋳造する鋳型中に埋設するに際して、右鍔金の内周面に如何なる手段を設けるかについては、引用例には全く記載がない。それ故、前記(イ)で原告が指摘する引用例の記載箇所が完成品としての接手用鍔金の内周面に鋳物砂製の内殻鋳型を一体構造に形成焼成して、これを注砂管を鋳造する鋳型中に埋設することを意味するという原告の前記主張は、充分な根拠がないとすべきである。成立に争いのない甲第七号証中、引用例記載の従来技術の内容を原告の前記主張と同じように理解する弁理士の調査意見も、引用例の記載を正解しているものとは認め難く、また、成立に争いのない甲第八号証の一、二は、当該参考図面の構造が引用例を包含する昭和一六年実用新案出願公告第一三八七二号公報のどのような文言に基づいて図示されたものであるかについて明らかでなく(この点は、審決で指摘されているにかかわらず、本訴において原告の何ら解明しないところである。)、したがつて、右甲号各証はいずれも原告の前記主張を肯認する資料となし難い。

原告は、引用例記載のものにおいて、鍔金と管とはくつついた状態にならないよう、嵌装されている状態にあり、したがつて、鍔金を鋳型中に埋設するに当たつて、特別な内殻砂型を一体に構成させたうえ鋳込むものであることは当業界における技術的常識である旨主張する。

しかしながら、引用例に、「鍔金ヲ鋳造スベキ管ニ嵌装スル位置ニ於テ其ノ管ヲ鋳造スル鋳型中ニ埋設シタル後」と記載されているとおり、引用例においては、鍔金を鋳型中に埋設する際、管に対して鍔金を埋設する位置を嵌装する位置であると表現しているにとどまり、鍔金を管に嵌装する状態や、嵌装する状態にするための手段については記載されていない。

また、本件発明の要旨とする具体的特定の技術手段を用いて、鍔金を鋳型中に埋設するに当たり、特別な内殻砂型を一体に構成させたうえで鋳込むことが、技術常識であることを認めるべき証拠はない。

したがつて、原告の前記主張も理由がなく、結局、引用例がいわゆる鋳ぐるみ鋳造法を示唆していることは明らかであるとする原告の主張は、その理由として主張するその余の点(前記(ロ))について判断するまでもなく、採用することができない。

以上のとおりであつて、引用例には、本件発明の構成要件である、「ユニオンナツトの少くとも内周面に鋳物砂製の内殻鋳型をセルモールド法によつて一体構造に形成焼成し、この内殻鋳型の内径面を鋳造する管製品の管部外面と適合する形に作りおき、しかる後に鋳物砂の中に前述の内殻鋳型を有するユニオンナツトを定置する」との記載はなく、またこれを示唆する記載もないものといわざるをえず、本件発明は引用例に記載されたものと相違し、また右記載に基いて容易に発明をすることができたものとは認められないとした審決の認定、判断に誤りはない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとする。

〔編註その一〕 本願発明の要旨(昭和五五年審判第一三六一一号の訂正審判の審決の結果訂正された明細書の特許請求の範囲の記載)は左のとおりである。

ユニオン型接手を使用して接続する管製品を鋳造するに当り、予め既成のユニオンナツトの少くとも内周面に鋳物砂製の内殻鋳型をセルモールド法によつて一体構造に形成焼成し、この内殻鋳型の内径面を鋳造する管製品の管部外面と適合する形に作りおき、しかる後に鋳物砂の中に前述の内殻鋳型を有するユニオンナツトを定置し、これに中子を挿通配置して鋳造製品の管端に自然にユニオンナツトを緩嵌装着することを特徴とするユニオン型接手に於けるユニオンナツト嵌装方法。

(別紙図面参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙

<省略>

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